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原点は、ワクワクとの出会い(インタビュー:建築家 大成優子さん(1))

『働くこと』を考えるための2つの座標」で書いたように、現在の日本では、「自分で考えて、自分のやりたいことをみつける」ための教育は、ほとんどなされてこなかった。

そこで、「自分のやりたいことをみつける」方法について、様々なタイプの職業人の働き方のスタイルや考え方、経験等をインタビューすることによって考えてみたい。

今回は、「フリーという立場で働くという選択をした人の働き方」ということで、若手建築家の1人として注目される建築家の大成優子さんにお話を伺った。

建築家 大成優子さん

大成優子(建築家:大成優子建築設計事務所)
1974年 東京生まれ 茨城県つくば育ち
1993年 私立茗渓学園高等学校卒業
1997年 東京工業大学工学部建築学科卒業
1997年〜2002年 妹島和世建築設計事務所
2002年〜 大成優子建築設計事務所
2003年〜2004年 中央工学校非常勤講師
2004年〜 武蔵野美術大学非常勤講師
[受賞歴]
2003年 JCDデザイン賞2003大賞
2003年 第24回INAXデザインコンテスト入賞

大成優子さんは、現在、自身の個人事務所(大成優子建築設計事務所)を立ち上げ、建築家として活躍している。2003年にはJCDデザイン賞2003大賞、2007年春には個展を開くなど、現在注目の若手建築家の一人である。そんな大成さんに、「自分のやりたいことをみつけたきっかけ」「働くことに対する意識」について伺った。

●ワクワクが原点

Yuko Onari

「中高生の頃は、部屋の模様替えが好きで、しょっちゅう家具を動かしたり、切ったり貼ったりしていました。そのうち、こういったことを(仕事として)やるインテリアコーディネーターという職業があるらしいということを知り、興味をもちました。さらに調べていくうちに、家そのものをデザインする建築家という職業があることがわかり、『なんだかその方がダイナミックでおもしろそうだ』と思って大学は建築学科に進学しました。」

だが、大成さんが将来の道として建築家に本気で意識をしたのは、大学一年生の時の出会いが大きいという。同じ学科の友人と、とある建築関係の展覧会に行った。そこで、大成さんは、妹島和世氏「森の別荘」という作品と出会う。

「衝撃を受けました。うわぁ、面白いって心から思った瞬間でした。模型をみてワクワクした。円形のシンプルな建物なのですが、人がいる位置によって風景が変わる。建物から周りの森に向かって伸びていく部分があるなど、とても楽しそうだなあと思いました。20〜30人の建築家が出展している展覧会だったと思いますが、妹島さん以外の作品は覚えていないです。」

この時、一緒にいった友人によると、大成さんは一時間近くも『森の別荘』の模型を熱心に見つめていたという。この時の衝撃が、この後の大成さんの「働き方」を決定づけることになる。

●一本の電話が進路を決める

大学の研究室の所属の際も、大成さんは意匠(設計)分野を選択する。そのまま大学院まで進むつもりだったが、院の試験に落ちてしまう。だが、これが1つの転機となる。

「大学に研究生として残ることにしましたが、卒論や卒業設計のあった大学4年生の時と違い、時間の余裕もありました。そこで、展覧会で衝撃をうけた妹島氏の事務所に電話をし、是非アルバイトさせて下さいとお願いしたところ、『一度来て、仕事を手伝ってみないか』ということになりました。大学の先生にも相談したところ、『それはいい。是非行きなさい』と背中を押され、妹島事務所に通うことになったんです。事務所に行っているうちに徐々に仕事を頼まれるようになり、いつの間にか事務所のメンバーの一員となっていました。」

電話をした時から4年半、大成さんは妹島事務所で働くことになる。「毎日、事務所にカンヅメでした。毎日、仕事に没頭していました。ちょうど事務所も手がけるプロジェクトの規模がだんだん大きくなっていった時期であり、まさに寝食を忘れて働きました。」

この話は次回に続きます。
2007年11月29日
八田 誠(はった・まこと)
※本稿は執筆者の個人的見解であり、弊社の公式見解を示すものではありません。
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