株式会社リベルタス・コンサルティング

人材育成からみる2007年問題

2007年になると、1947年から1949年にかけて生まれた「団塊の世代」が60歳の定年を迎えます。これにより大量の退職者が発生します。このような団塊の世代の大量退職により生じる社会的変化、これがいわゆる「2007年問題」です。2007年問題では、(1)年金負担の増大、(2)地域福祉コストの増大、(3)オフィス需要の低下(賃貸不動産市場の悪化)、(4)家計貯蓄率の低下などが懸念されています。 今回は、2007年問題について、リベルタス・コンサルティングの重点テーマの1つでもある「人材育成」に絡めてみていきたいと思います。

労働市場における「2007年問題」

労働市場では、670万人ともいわれるこの世代の雇用者が大量に定年退職することにより、少子化も重なり深刻な労働力不足に陥ることが問題視されています。

さらに、2007年問題では、ベテラン世代から中堅・若手層への技術の伝承が、製造業を中心とした課題となっています。また、IT業界では、企業のメインフレームの設計や開発・保守をしてきたベテランが、2007年を契機に大量引退します。その技術や経験が引き継がれず、以後、システム維持が難しくなるとの懸念がささやかれています。

高年齢者雇用安定法の改正

このような動きを受けて、「高年齢者雇用安定法」が改正されています。企業に対し2006年4月1日までに「定年年齢を65歳に引き上げる」か、「定年を廃止する」か、あるいは「定年退職者のうち希望者を嘱託等の身分で引き続き雇用する継続雇用制度を導入する」か、いずれかの対策を採るよう義務づけています。ただし、「事業主が、労使協定により継続雇用制度の対象労働者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、継続雇用制度を導入したものとみなす」ため、この場合は希望者全員を雇わなくてよいことになります。

2007年問題に対する企業の対応

厚生労働省「平成16年度高年齢者就業実態調査」の結果では、今後2年程度で60歳以上の労働者の雇用を「増やさない予定」の事業所は36.0%と、「増やす予定がある」事業所割合は、10.9%を大きく上回っています(「未定」は、50%)。

一方で、一部の企業では、高年齢労働者の経験・能力活用や若年雇用者への技術伝承を目的とした人材施策の実施が始まっています(下記図表参照)。フリーターやニートといった若年雇用問題に注目が高まっていますが、同時に高年齢労働者を活用し、いかに若年層へ技術を伝承していくかが、企業における人材施策の最重要テーマの1つとなっています。

最近の企業の高齢者雇用対策例
企業名施策の具体的内容
マツダ「技能職再雇用の推進」
1991年度から工場の生産ラインで働く技能職を対象に、再雇用希望者を登録する「シニアファミリー制度」を設けている。2002年以降、利用者が増加している。(参考:2005/07/14 中国新聞地域ニュース)
オーエムエンジニアリング定年延長による技術伝承の推進」
定年年齢を65歳に延長し、ベテランと若い人とのペア作業を推進し、それにより技術伝承を促進した。賃金は年金との併用で60歳時のベースを確保した。60歳以降フルタイム勤務が難しければ、一人親方制度とも呼ぶべき制度を導入して事情のある高齢者従業員の雇用を確保した(参考:高年齢者雇用開発コンテスト企業事例より)
新日本石油「定年退職者の再雇用制度を導入」
希望者を対象に、2006年度に60歳の定年を迎える社員の雇用期間を3年間、2007年度以降は5年間延長。今後、技術系を中心とした社員の退職が増すことに備え、技術を若手社員へ伝承し企業競争力を維持する狙い。(参考:新日本石油HP)
日本IBM「シニア・エキスパート制度の導入」
高い能力を有し、今後も会社への貢献が期待される社員が55歳となった際に「シニア・エキスパート」という雇用形態を選択できる。一度定年扱いで退職した後、新たに単年度の雇用契約をかわし、最大65歳まで働き続けることを可能とする。(参考:日本IBM HP)

教育界における「2007年問題」

人材育成に関わる「2007年問題」は、団塊の世代の大量退職に関わる諸問題だけではありません。教育界では別の「2007年問題」が存在します。それは、少子化の影響により、2007年に、大学・短大の志願者数が入学者数と一致する「大学全入時代」になることを指します。

大学の経営危機

大学全入時代の到来によって、大学受験には競争原理がなくなるかというと、そんなことはありません。現実には、有名上位大学に人気が集中し、中堅以下の大学、特に地方大学では、定員割れやそれに伴う大学同士の統合、最悪の場合には、大学の経営破綻が増えると考えられます。大学では、生き残りをかけた学生の囲い込み競争が、よりいっそう激化することが予想されます。

学生の方も、大学選びには慎重にならざるをえません。何故なら、入学した大学が在学中に倒産すると在学生はどのような扱いになるかは、まだ決定されていないからです。経営破綻した大学の学生は、再度他の大学に入学しなければならなくかもしれません。また、現状のままであれば、特に、4年生の時に大学がつぶれると大学卒業も企業の就職内定もすべてを失う可能性もあります。

学生の質に対する懸念

一方で、競争無しで大学に入れる大学全入時代においては、学生の質の低下についても問題視されています。さらに、今年2006年は、新学習指導要領=「ゆとり教育」の学生が初めて大学に入学する年です(これを2006年問題と呼ぶこともあります)。2007年問題(無競争)と2006年問題(ゆとり教育)の同時発生への対応如何によって、大学生の学力低下がますます加速することが懸念されています。

このように、大学にとって2007年問題は、経営力と教育力の向上という2つの課題の発生であるといえます。さらに重要なのは、4年後にはこの世代の学生は新社会人として社会に出ることです。すなわち、大学にとって2007年問題は、大学だけの問題ではなく社会全体の問題として間近に迫ってきているといえます。

2006年2月3日
八田 誠 (はった・まこと)
※本稿は執筆者の個人的見解であり、弊社の公式見解を示すものではありません。
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