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国民保護法と市町村の役割

国民保護法のスキーム

国民保護法は、平成15年の有事三法の成立を受けて検討が進められ、平成16年9月に施行された「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」で、日本が武力攻撃を受けたときや大規模テロにさらされたとき、国民の生命・財産を守る方法を定めた法律で、「避難」、「救援」、「武力攻撃に伴う被害の最小化」を3つの柱として、国、都道府県、市町村や指定公共機関等の役割を規定している。

  1. 避難
    武力攻撃事態が迫った場合、国は国民に警報の発令、避難措置の実施等を都道府県知事に指示する。
    都道府県知事は警報の通知や住民の避難指示を出し、市町村長は防災行政無線等で住民に避難指示を伝達するとともに、消防等を指揮して住民の避難誘導を行う。
  2. 救援
    国は避難後の住民生活を救援するため都道府県知事に指示を出す。
    都道府県知事や市町村長は日本赤十字社等の協力を得ながら、収容施設の設置や食品・飲料水の提供、生活必需品や医療の提供など必要な救援措置を実施する。
    また、市町村は住民の安否情報を収集・整理し、都道府県等に報告・提供する。
  3. 武力攻撃に伴う被害の最小化
    原子力発電所、高圧ガスなど危険物取扱所などについては国が地方公共団体と協力して、施設の安全確保、計画区域を設定して立入制限や退去命令、消化活動など必要な措置を行う。
武力攻撃事態等における国民の保護のための仕組み
武力攻撃事態等における国民の保護のための仕組み

* この図では単純化するために指定公共機関等は除いている

国民保護法で求められる市町村の役割

市町村は地域住民に一番近い自治体として、住民の避難誘導、安否確認など様々な場面で大いに期待されている。 特に、実際の避難、救援などの場面を想定すれば、高齢者や障害者等に対する配慮、大都市や山間部などの地域特性に配慮することが必要であり、そうした細やかな検討を進め、実行するには市町村の役割が必要不可欠である。

通常の防災対策で整備が進められてきた市町村防災行政無線や地域公共ネットワークなど既存のインフラを活かし、これらの機能が有事にも機能するよう一層の整備が重要とされている。

今後のスケジュール

国民保護法施行後のスケジュールとしては、まず国は国民の保護に関する基本方針を策定し、国会に報告することが求められており、平成17年3月に想定される武力攻撃事態の類型や類型に応じた避難、救援、武力攻撃災害への対処措置などをまとめている。 その具体的な内容は国民保護ポータルサイトに掲載されているので参照されたい。

続いて、都道府県は都道府県国民保護計画を今年度中に策定することになっており、そのモデル計画も平成17年3月に消防庁がまとめたところであるが、現在策定済みの県は鳥取県、福井県の2県にすぎない。

市町村についても18年度をメドに市町村国民保護計画を策定することになっている。 現在消防庁が市町村のモデル計画を作成しているところで、今年度中に策定される都道府県の保護計画とあわせて、材料が揃ってから検討をはじめようとしている市町村が多いと思われる。

しかし、現在都道府県で計画を策定済みの2県と埼玉県は国の基本方針やモデル計画を待たず、独自に検討を進めていた県である。 市町村国民保護計画で検討すべき事柄は多岐にわたることから、災害対策基本法に基づく地域防災計画など既存の危機管理の仕組みと併せて早めに検討を開始し、実効性のある取り組みを行うことが求められている。

2005年11月25日
萱園 理 (かやその・おさむ)
※本稿は執筆者の個人的見解であり、弊社の公式見解を示すものではありません。
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